横浜市における「子どもたちの安全なインターネット利用のための地域密着型教育啓発事業」現地レポート
横浜市本牧地区では昨年度、横浜市こども青少年局の進める「思春期キャラバン」の一環として、四回シリーズ構成で、保護者向けに「ネットサポーター養成講座」を開催しました。
今年度は、装いも新たに子どもネット研が事業主体となり、地元に縁の深いIT企業の協賛を受け、受講対象者の幅を保護者以外にも広げるとともに、地域での利用実態や意識についてのアンケートとの組み合わせなど複合的なプログラムとしての開催が決まりました。
子どもネット研では今後、横浜市本牧地区における、毎回の講座の様子などを現地レポートとしてお伝えしていきます。
(報告・担当講師:高橋大洋/子どもネット研事務局)
主催 | 子どもたちのインターネット利用について考える研究会 (実施担当:ピットクルー株式会社/子どもネット研運営協力企業) |
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協力 | 横浜市本牧地区の2中学校、4小学校 (横浜市立大鳥中学校、本牧中学校、大鳥小学校、本牧小学校、本牧南小学校、間門小学校) |
後援 | 横浜市教育委員会、横浜市こども青少年局 |
協賛 | 株式会社ディー・エヌ・エー |
第一回講座現地レポート – 2012年8月1日開催
日時 | 2012年8月1日水曜日14時30分〜16時 |
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会場 | 横浜市立大鳥中学校 スタジオ会議室 |
来場 | 約20名(市内教職員および保護者等) |
第一回の講座は、夏休みに入って間もない、大鳥中学校の教室をお借りして開催されました。
今回開かれたのは、日頃から児童生徒の生活指導に関わり、ケータイ・ネット問題にも直面している先生方を主な対象とした、「教職員等指導者向けケータイ・ネット講座」です。
インターネット利用トラブルに遭遇した児童生徒のSOSは、最初に保護者に届くことが理想ですが、実際には第一報が、担任の先生や保健室の先生など学校にもたらされることが少なくありません。特に、学齢が低いほど、トラブルの多くが同級生同士や同じ学校の中で起きることになり、その解決には学校側による実生活の把握と指導が有用とされています。
今後は、生活指導に豊富な経験をお持ちの先生方に、インターネット利用トラブルの背景や対処方針についても正しく知っておいていただくことが、より適切な指導の参考になるに違いないという考え方で、学校側と子どもネット研で一致し、今回の開講が決まりました。
講座の冒頭、大鳥中学校の齋藤校長先生、ならびに本牧小学校の田中校長先生から、講座開催の趣旨説明とご挨拶をいただきました。
その後、講師からのご説明は、「子どもたちのインターネット利用実態や環境の理解」に始まり、「トラブル予防のために伝えるべきこと」、「理想的なデビューのあり方」、「問題解決のために学校が果たせる役割」という構成で進行しました。
講座の終盤には、グループに分かれて、講座での気づきや日常の指導についての課題共有の時間を持ちました。こうして、講座を一方通行の座学だけで終わらせないことで、受講者にとっては日常での具体的な行動の第一歩につながるという効果が期待されるため、子どもネット研では、昨年度来、こうした時間をカリキュラムに組み込むように努めているところです。
講座終了後の個別質問やアンケートでは、受講者から、「アプリ利用のことなど、自分も最近、携帯電話からスマートフォンに変えてみて、初めて理解できたことが少なくない。」といった、スマートフォンの普及に伴う指導上の不安が多く挙げられるとともに、今後、講座や調査などを組み合わせた、地域向けの総合的な施策が展開されることに対しての期待の声が寄せられました。
なお今回の講座は、90分間という枠の中に、昨年度、4回に分けて開催した「ネットサポーター養成講座」に相当する内容を詰め込んだもので、受講者にはやや負担の大きいものだったかと思います。参加いただいた先生方、保護者のみなさん、大変お疲れさまでした。
【今後の展開】
夏休み明け以降、本牧地区の家庭を対象に、インターネット利用実態や意識を確認するアンケートが計画されています。
また、これらの結果を反映させながら、昨年度のネットサポーター養成講座の受講者や、新たに希望される保護者を対象として、地域内の学びあい助け合いの核となる「少し詳しい」保護者を増やすための連続講座(フォローアップ講座)も開催される予定です。
第二回講座現地レポート – 2012年11月7日開催
日時 | 2012年11月7日水曜日15時〜17時 |
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会場 | 横浜市大鳥中コミュニティハウス |
参加 | 本牧地区小中学校の保護者のみなさん 16名 |
今年で二年目となる、横浜市中区本牧地区でもようやく保護者向け講座が始まりました。
基本のシナリオは、他の地域での講座と同様、前編で「子どもたちのインターネット問題を正しく知ろう」、後編で「家庭でできること、地域でできること」という流れで進んでいきます。これはそれぞれ、前提の理解(知識の習得)と、対処行動のためのきっかけづくり、という分担になっているわけです。
ところが、前編の講座に集まったみなさんのうち、4割弱は、昨年度の「地域ネットサポータ養成講座」の受講経験をお持ちでした。
そうなると、昨年度のフォローアップをしながらも、初めてご参加いただいた6割のみなさんには、基本のところを丁寧にお伝えすることが必要になります。この二つをうまく両立出来るのか、複数年に渡る取り組みの難しいところです。
そこで本日の講座の冒頭では、昨年度受講済の方向けに、「変化したこと、しないこと」というスライドを追加して、背景状況の整理を試みました。
具体的には、「接続機器の多様化や無線接続の一般化」、「保護者管理手法の選択肢の広がり」といった点は、初めて見る大きな変化のように見えるかもしれないが、実際にはいずれも、「インターネットらしさ」として以前から存在しているという指摘です。もちろん、人気サービスの主役が交代するなどの変化もありますが、しっかりと本質をつかんでさえいれば、恐れるには足りないものです。
結果的に、「子どもたちの利用の特徴とトラブル」「人気サービスの構造と利用リスク」「グループワーク」という順序で進行した本日の講座についても、受講者の多くから高い評価をいただくことができました。
また、基礎的な用語の解説が必要とするご指摘がある一方で、もっと難しくてもよいというリクエストもあり、講座を受講者の要望別に複数に分ける必要も感じられました。
第三回講座現地レポート – 2012年11月15日開催
日時 | 2012年11月15日木曜日10時40分〜11時25分、11時30分〜12時15分 |
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会場 | 横浜市立本牧小学校 体育館 |
参加 | 同校5年生児童55名、6年生児童80名 |
子どもネット研としては珍しい、児童生徒向けの講座を、横浜市立本牧小学校からのご要望をいただき、本事業の一環として実施しました。
受講してくれたのは、5年生と6年生。それぞれ別々の時間帯で、2回に分けての実施となりました。
小学生児童向けについても、子どもネット研としては「発信利用のリスク」を中心とした講座を設計します。
横浜市では、この学年になると、多くの子どもたちがパソコンや携帯電話を使って電子メールのやり取りをすることに慣れ、一部についてはブログなどを作成し始めるといいます。
しかし、機器の操作については知っていても、案外、その仕組みをキチンと教わる機会は少ないため、身近な相手を中心に、様々なトラブルを起こしがちです。
そこで、今回の講座では、「メールはどのように届くのか」「脅迫メールが届いたら」「プロフィールページを公開した時のデータの流れ」「自分のページを見た人から連絡が来たら」といった要素を、45分間の授業時間の中に盛り込み、小学校高学年でも理解しやすいように、なるべく体感できるような仕掛けを含めた進行としました。
担任の先生のご協力もいただいたことで、子どもたちは熱心に参加してくれました。
初めて知ったこととしては、最も多くの回答が集まったのは、やはり「ネットに何か書くたびに、その内容があちこちに残る(記録性)」という点でした。また、「文章や写真をネットに送ると、完全には取り戻せない」という点についても、気づきがあったという回答が数多く寄せられました。
講座の最後は、「困ったことがあった時は」という、トラブルへの対処(初動)についての約束としました。「まずはおうちの人や学校先生に相談しよう」「友だちに相談するのはその後で」という点を強調して、短時間ながら充実した特別講座を無事終えることが出来ました。
第四回講座現地レポート – 2012年12月4日開催
日時 | 2012年12月4日水曜日15時〜17時 |
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会場 | 横浜市大鳥中コミュニティハウス |
参加 | 本牧地区小中学校の保護者のみなさん 10名 |
本牧地区の保護者向け講座もいよいよ後編となりました。一連の地域密着型事業も、これで一区切りになります。
まず冒頭に解説を行う、前回アンケートでのご質問としては、無料通話アプリのような旬なテーマに加え、モバイルルータなどを含む、用語についても複数寄せられ、改めておさらいを行いました。
子どもたちの理想のインターネットデビューのあり方としての「段階的な解禁」については、やはり反響が大きく、改めて家庭内での使わせ方を考え直してみたいといった意見や、次の段階に進むべき時期が来ていることが分かったといったコメントをいただきました。
また、フィルタリングの活用も、アダルトサイトのブロックが主な目的ではなく、前述の段階的利用モデルを実現させるためのツールであるというご説明をしたことで、新たな気づきを得た受講者も少なくなかったようでした。
そして最後に、グループワークを行った後、地域全体としてどのように取り組むのかについて受講者とともに考えることで、前後編構成の講座を終えました。
なお、参加者アンケートには、この問題について理解する保護者を増やすために、どのような取り組みが必要なのか、自主的、前向きな検討をいただけるという自由記述も複数見られ、二年連続で実施した研修の機会が、少しずつでも変化を起こすきっかけになっていることを改めて感じました。