2009年3月・自治体(秋田県庁)での採用例

「中高生のお子さんを持つ保護者のためのインターネットセーフティガイド」活用事例

 子どもネット研のモデル教材「中高生のお子さんを持つ保護者のためのインターネットセーフティガイド」のシナリオを利用して、自治体が独自の保護者向け啓発教材を作成した事例をご紹介します。

 

2009年3月・自治体(秋田県庁)での採用例

 子どもたちのインターネット利用に関わるトラブルが多く報じられている中、国だけでなく、各地方自治体でも、子どもたちが被害者・加害者とならないために、啓発セミナーの開催など、様々な取り組みを行なっています。

 中でも秋田県では、子どもネット研のモデル教材のシナリオを採用し、県独自の編集を加えたオリジナルの保護者向け啓発教材を制作、この2月に県内に一斉に配布しています。独自教材制作に至った経緯やモデル教材の評価などを、制作を担当された秋田県庁の皆さんに聞きました。(聞き手:子どもネット研事務局・高橋大洋) 。

 

写真:啓発教材制作推進の中心となった県民文化政策課の鈴木主幹(左)と伊藤副主幹

写真:啓発教材制作推進の中心となった県民文化政策課の鈴木主幹(左)と伊藤副主幹

【プロフィール】

秋田県 生活環境文化部 県民文化政策課

主幹 鈴木嘉己様
副主幹 伊藤治喜様

秋田県 教育庁 生涯学習課

社会教育主事 糸田和樹様

※部署名、役職等は取材日(2009年3月5日)時点のものです。

 

教材の制作はいつ頃、どのようにスタートしたのでしょうか?

写真:シンポジウムに参加しモデル教材の採用を進めた伊藤副主幹

写真:シンポジウムに参加しモデル教材の採用を進めた伊藤副主幹

 平成20年度の重点施策の一つとして保護者向けの啓発活動がテーマとして挙がり、5月頃には啓発教材の作成と配布を行なうという方針が決まっていました。
 教材を作ること自体は決まったものの、県庁としては前例も無く、中身をどのようなものにするかについては正直なところ迷いもありました。
 検討を進める中で、教育現場や県警による啓発活動の様子を聞いても、政府等の調査結果を見ても、どうやら保護者と子どもの理解度や問題認識にはとても大きな差がある。まずは保護者に課題をしっかりと認識してもらうことを優先しようという方針を決めました。

 

子どもネット研モデル教材を知った経緯は?

 保護者向けということでは、それまでにも官民それぞれいろいろな教材はありました。しかし現場の目線からすると 扱っている範囲がどうも広すぎる。一つずつのポイントの解説も浅い。シナリオとして魅力的なものはなかなか見つかりませんでした。
 そんな状況で9月に東京で開かれた子どもネット研のシンポジウムに参加してモデル教材の存在を知りました。

 

モデル教材シナリオ採用の決め手となったのはどのような点でしたか?

写真:有害情報対策検討会を立ち上げ、県内関係者の知見を集めた鈴木主幹

写真:有害情報対策検討会を立ち上げ、県内関係者の知見を集めた鈴木主幹

 子どもネット研のモデル教材のシナリオは、収録範囲がうまく絞られていると思えました。その優先順位の付け方も、我々の現場が保護者に伝えたい方向性と一致していました。 引用や改変の自由度も高いのも魅力でした。解説の図版や文面なども、このままでも保護者に十分伝わるのではないかと期待できるものでした。

 

オリジナル教材としての制作はどのように進みましたか?

 教育庁や県警にも事務局として参加してもらいながら、県独自のガイドブックの内容を検討・決定するために、県内の有識者・関連事業者による有害情報対策検討会を立ち上げました。モデル教材の優れたシナリオを生かしながら、どうしたら秋田の保護者にも実感を持って読んでもらえるのか、またネット利用の危ない面を必要以上に強調しすぎて逆効果にならないように、工夫をこらしました。

 

完成した教材はどのように使われているのでしょうか?

photo

写真:完成したハンドブック

 限られた予算の中で、印刷物としては計7000部を作成することができました。県内の小中高はもちろん、各単位PTAにも送付しました。ちょうど新年度を迎える時期でもあり、関連行事に合わせた活用が始まっているようです。

 また、保護者向けの講習会で配布するということで、県警にもそれなりの部数を提供しています。

 一部の高校からは、追加送付のリクエストもあったのですが、すぐに増刷することはできず、県のホームページからダウンロードできるPDFデータを案内しています。

 

教材に込められた思いを聞かせてください

photo

写真:秋田の地元紙でも子どものネット利用トラブルについての関心は高い

 今回のガイドブックは、保護者向け啓発のスタートラインに過ぎないと考えています。マスコミ報道やさまざまな公的な広報の影響か、保護者が「子どもとネット」問題の当事者・責任者であるという理解は確実に広まっています。しかし、例えば携帯電話専用のSNSサイトはわずか3年ほどの歴史しか無いものですから、こうしたものについて、我が子への指導に自信が持てる保護者はほとんど居ないのも現実です。それにどうしても、具体的な各サイトの新機能のような、枝葉の部分に目を奪われてしまう傾向があるんですね。それで自分は子どもにはとてもかなわないと思ってしまう。でも本来、全ての保護者が細かな機能を覚える必要など無いと思います。

 今回のガイドブックに、参考資料としてネットスター社の独自調査結果を収録したのも、保護者に『表面的な知識の有無ではなく、子どもと向き合ってしっかり話を聞くことが何よりも大切』という原則を伝えたかったからです。

 

モデル教材自体の今後に期待されることがあれば教えてください

写真:新年度はリーダー研修会などを充実させていきたいとする教育庁の糸田社会教育主事

写真:新年度はリーダー研修会などを充実させていきたいとする教育庁の糸田社会教育主事

 新年度には県として、さらに保護者への働きかけを強めていきたいところです。

 子どもネット研のモデル教材は、現時点での最優先課題として、特に携帯電話機による参加型サイトの利用を取り上げていて、実態にも合っていると思いますし、素材としても大変使いやすく分かりやすかったです。

 ただし今後、携帯ゲーム機を使ったネット利用なども増えてくると予想しており、そうした変化にもうまく対応していってほしいと期待しています。

 

 

| 自治体活用事例へ戻る |

ページ上部